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コータローさんからの寄稿
 2009年4月5日 日曜日 
神奈川県 大津
 九死に一生スペシャル パパ頑張って! 


北朝鮮の人工衛星が発射され、太平洋上に飛翔物が落下する4時間ほど前、
太平洋に落水しました。

今シーズン初の釣行は、前日夕方に妻からお許しが出て急遽決まった
横須賀でのボートアジ釣り。
先日、自作した魚探の振動子固定具(脚)のフィールドテストも兼ねてます。
普段は翌日からの仕事を考慮し、日曜の釣行はしないのですが
最近仕事で何かとストレスを感じており、春の海に出ることを決意し、横須賀の貸しボート店へ
自宅立川をまだ日も明けぬ3時半に出発しました。

同僚から、横浜横須賀道路が馬堀海岸まで延びたと聞いており、
道中も楽しみの釣行でした。
現地の釣具店に到着したのがボート出航の2時間前。
海沿いの釣具店は5時開店!
今回は、事前に用意していたプラカゴとLTビシの仕掛けを使うため、
付け餌のサシアミとアミコマセ、さらにイチモチなどの外道も楽しみたいので
イソメも1パック購入しました。
車に積んであると思っていた雨ガッパをおいてきたことに気づき、それならば!と、
以前から欲しかった完全防水のツナギのゴム製ズボンも購入しました。

出船まで随分時間があり、岸壁から海の様子を写真撮影。
白波は出ていませんが、南に停滞する前線へ北からの風が流れ込んでいて、
それなりに風はありました。

7時に出船となり、20分ほど漕いだ後、魚探の電源を入れました。
水温13度、水深20mとしっかり表示されていて出だし好調です。
低速で航行しながらポイントを探していると、連続して魚探に反応があり
魚も検知できているようでした。
一度アンカリングをし、魚探をチェックしましたが、目ぼしい反応がないためアンカーを引き上げ、
少し遠方のポイントに向かいました。

このポイントはアジの好ポイントと聞いており、魚探からも散発的に
フィッシュアラームが聞こえてます。
アラーム音が多かった真上に船を停めるため、船を反転させアンカーを打つため
風上へ移動しました。
そして、本日2回目のアンカー投入時に事件が待っていました。


前日、「私的標本」というサイトで「アンカーの上げ下ろし時に注意」
という記事を見ていたのですが、やってしまいました。
アンカー投入の際は、真下へ落とす基本に反し、手前から下手投げで放り込んだのです。

慣性の法則。アンカー投入時の力がそのまま上半身に残り、
船の外側へ上体が流れてしまいました。

『マズイっ!』

幅がなく、ただでさえバランスの悪いボート先端部分。
あっという間に、両足の膝が船べりを越してしまいました。
まさに時間が止まったような感覚で、ゆっくりと海に向かって上体が流れていきます。

『ここで足をかけると、船も転覆する!』なぜか冷静な判断(^^;

ザブンッ!

水温13度、落水ポイントの水深は26m、落水直前の現場の状況です。
気がつくと、自分は太平洋横須賀沖の海の一部となっていました。

今回、ライフジャケットを着用していて本当に助かりました。
九死に一生を得たといっても過言ではありません。
ジャケットは見事に機能し、重くなっていく長靴やツナギのズボン
(まずいことに長靴の外に裾を出していなかった)の引き込みを、
もろともせず首から上が水面より濡れずに出ているのです。
3月初旬に、竿と一緒に通販で購入したライフジャケット(約3,500円)に救われました。


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初登場でいきなり仕事したライフジャケット

沈まない体、足は真下に引っ張られますが、安定した状態で冷静に考える時間が持てました。
何より、両手が自由に使えることの安心感は大きかったです。
水難事故で怖いのは、パニックになる事と聞いたことがあります。

まず体勢を立て直し、横波を受けないよう船べりに手を掛けて船尾へ回り込みました。
アンカーロープは海底に到達してもいい頃ですが、まだ船の向きが安定していません。
横からの船内への復帰を試みると、転覆の可能性もあります。
(後日、こどもパパ様からも『横から乗り込むのはタブー』とご意見をいただいてます)

船尾に回り、腕の力で上がろうとするのですが体が全く上がりません。
長靴を脱ぎ(ちゃんとボートに投げ入れてますが)、帽子と偏向グラスをはずし、
何度も何度も試しました。
それでも無理でした。

実際、体をある一定の高さ以上に上げることができません。
ライフジャケットが水面より上に少しでも出ると途端に動けなくなります。
想像以上に、ライフジャケットが浮力を稼いでいる様子。このままでは・・・。

『とにかく掴むところが欲しい!』そう思い、船中の備品に目をやります。
船尾からクーラーボックスの取っ手を掴むも、役に立たず。
スノコも浮いてしまいどうにもなりません。

アンカーを降ろす前、ポイント周辺には左前方50m程度の位置にボートが1艘。
投錨してました。
この時点では、こちらのアンカーが伸びきっているため、
視界に入らない位置関係(水面付近ですから視野も稼げない)。

今回、ライフジャケットのポケットには呼び笛を入れておらず、
この距離で声を出しても届かないと判断。
その時、頭によぎったのが体温の低下。
春とはいえ、水温13度。まして、泳ぐための装備を身につけておらず、
岸まではどう見ても300m以上。
なまじ船が転覆していないため、ボート上に人が見えなくても、
横になっている程度にしか思われないでしょう。

その時、不意に4歳の長男坊の笑顔を思い出し、家で待つ3人の家族の事を考え、
『なんとしてもボートに戻らなければ!』と気力が湧いてきました。

気力はあれど、体力がない。
久々に漕いだボートの疲労と、落水後に何度も体を持ち上げようとしたために、
左右の腕は悲鳴を上げてます。
残された時間は僅か、もう一度冷静に海の状況を考えました。

船の構造は横波に弱く、正面から来る波には強くなってます。
船尾を下げて、体を滑りこまそうにも、船尾は全く下がりません。
今の時点では、アンカーが利いており、船尾は風下に向いています。
横波も受けにくい位置関係です。

目に留まったのは、オールを固定する金具。
船の右舷に体を流し(この時点で、握力はほとんどなく船べりを掴む手に力が入らない)
手首を金具にかろうじて引っ掛けました。
本当に掴めないのです、中学時代から10年間やったハンドボールのお陰で
手首と握力には自信がありましたが、その時握力は殆どありませんでした。
足を船尾方向へ船に沿ってまわします。
力を振り絞り、左足を上げると何とか船べりに踵(かかと)が引っかかりました。
踵が引っかかっただけですが、気持ちは相当楽になりました。

『生きて帰れるかもしれない』

急激に体を起こすと転覆の危険がある為、左膝を船の中にいれ左舷方向に足を伸ばし、
バランスをとりながら上体を滑り込むように船中へ。

ゴロンッ

と体が転がり込み、途切れる呼吸で空を見上げてました。
『助かった・・・』と。

あくまでも想像ですが、落水時間が7時30分、再乗艇が7時50分頃。
おそらく20分程度海中にいました。
いや、長く感じただけで15分かもしれません。

しばらくはアドレナリンの所為でしょうか、寒さも疲れも感じず出来るわけがないのに
釣り続行を考えたりしてました。

それでもすぐ、喉の異常な渇きを覚え、体力の消耗、ずぶ濡れになった着衣など、
とても続行できるわけもなく、出してもない竿ですが納竿となりました。

帰りのボートは、追い風で楽かと思いきやフラフラと安定しない航行でした。
両腕がいう事をきかず、岸よりまで流されてしまいました。
なんとか帰港し、あまりの早い戻りに(8時半ごろでしょうか)驚いた若女将に事情を話してから、
現地を後にしました。

自分の不注意からの出来事ですが、取り返しのつかない事に至らなかったことを考えると、
つくづく運というか、落ちた事以外がすべてが幸運だった気がします。

・事前調達の股紐付のライフジャケットだったこと
・落水時アンカーに足をとられなかったこと
・道具を出す前で、仕掛けが出ていなかったこと
・アンカーが利いたお陰で、船の方向が定まったこと
・船が転覆しなかったこと
・失ったのは海水を被った携帯のみ。海保に電話しようにも液晶画面が水槽のようになってました
・長靴もタックルも財布も車のキーも無事だった

でも、一番大事な事は、大切な命を失わなかった事です。
あとから考えれば、花粉症薬と酔い止めの同時服用と疲労の蓄積から、
思考能力も反射神経も低下していました。
乗り合いの船と違い、一人でボートに乗る以上、自分が船長であり自己責任の世界です。

今回の出来事から、今後一人でも多くの方が水の危険を考えていただけると幸いです。

また、いつもながらの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

いや〜 コータローさん 生還できてよかったです。感謝したいくらいですよ。
十分気をつけていても、ちょっとした手違いやタイミングの悪さなどで危険にさらされることって
あるんですよね〜。わたくしも幾度か命を落としかけたことがありますし、一度に2人の息子を
失いかけたこともあります(これは思い出すだけでも震えてしまいます)。
コータローさんのライフジャケット今回初登場にしてやってくれましたね!
でも一番のお手柄は一番キツイ時にコータローさんを励ましてくれた息子さん&ご家族ですね!
この記事が一人でも多くの人の目に留まってくれたらいいと思います。

追記
「横から乗り込むのはタブー」と言ってしまいましたが、船尾にエンジンを積んでいないボートでは
それこそ船尾から乗り込むのは不可能だったかも知れません。
教科書に書いてあることを理解しておくことは勿論ですが、極限の状況下では「教科書プラス何か」
が明暗を分けるものだな・・と思いました。



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